人間の利他的な行動を、社会学ではなく、生物学なかでも遺伝学の観点から論じた書。
我々が考えている、人間に後天的に身に付くと考えている多くが、実は遺伝的なものであることに驚いた。例えば外向性や情緒安定性は遺伝的要素が高いという。
更には乳幼児期に親との交流が少なかったり、少年期に同年代とのコミュニケーションが薄かったりすると、知能、運動能力、意思疎通能力に劣位性が出ることも過去の論文を引用して説明している。
本編の中盤では、脳のしくみや、神経物質・ホルモン物質を細かに説明しており、これまた興味深い。
また、結語では、人間の脳の発達および人間社会の発展などの要因により、他の動物と比して利他性の高い人間には、利他的行動をとるような遺伝子があると結んでいる。
本能によって得るものは何か、学習によって得るものは何か、がよく分かる。
自分の人格形成の経緯を、ちょっと考えさせられる。
遺伝学に対して大いに関心が湧く本だ。
無論、社会学からのアプローチもそれはそれで考えなければならないが。