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【映画】MINAMATA -ミナマタ-

あまり、映画などを観て涙を流す性分では無いのだが、これはほぼ最初から最後まで涙が出ていた気がする。
映画館で涙が出たのいつ以来だろうか、記憶を辿ると恐らく14-15年前の寺尾聰の「半落ち」以来。
別に何か「お涙頂戴」的な感情ポルノに乗せられたのではなくて、極めて淡々と粛々と描かれる様子を見ているだけで、なんとも言えない気持ちにさせられた。
被写体と魂の遣り取りをする繊細かつ破滅的なアーティスト(写真家)スミスと、平穏な日常を突如として奪われた市民たち、経済成長・雇用創出を標榜する企業。これらを勧善懲悪や正義の観点では無く、ドキュメンタリータッチで映し続ける。もっとも完全なドキュメンタリーでは無く1時間55分という構成や端的なメッセージングなどの観点であろう、色々な部分がフィクショナイズされている(例えばスミスが暴動に巻き込まれて負傷するのは本当はチッソ熊本県水俣工場ではなくて千葉県五井工場、等々)。
主演のジョニー・デップや演者陣も、音楽の坂本龍一も、良い意味で脂が抜けていて、「俺の演技を見ろ」「俺の音楽に酔いしれろ」みたいな押しつけ感も無い。
國村隼加瀬亮コンビはとても「アウトレイジ」でののしりあっていたとは思えない静かな演技、浅野忠信も20年前に戦場写真家一ノ瀬泰造を演じたとは思えないしがない市民(有名な写真の被写体tomoko上村智子の父)を演じている。tomokoの母役の岩瀬晶子も殆ど台詞らしい台詞が無いのだが冒頭と最後のシーンは圧巻。
エンドロールでは水俣病が今なお完全解決していない問題であること、世界中で類似の事例が未だ数多く存在していることなどにも触れられている(私が実際に足を運んだインドのBhopalボーパールのガス漏れ事故も出てきた)。
なにせ、久々に、ズッシリ来る映画。