日本を取巻くエネルギー環境(中東依存のエネルギー、東シナ油田、外洋のメタンハイドレード、など)をきっかけに、一度ちゃんと地政学なるものについて理解したいと思い、手にした本。
84年刊行の本だが、内容的には全く色褪せていない。地政学の生立ち部分は甚だ退屈で読むのやめようかと思ったが、近世・現代を地政学の観点から論じた部分になると、俄然臨場感のある内容になる。ユーラシアにおいてドイツが昔から地政学に長じていたこと、また海洋を加味した地政学(「Sea Power」)においては英国が長じていたことがよく分かるし、この2国の地政学を20世紀初頭の日本は実によく勉強しており、小村寿太郎外相の戦略などは逆にドイツから称賛されていた、などが書かれている。
誤解を恐れずに言えば、自国の版図を如何に拡げるか、あるいは如何に防衛するか、ということが重大事であるからこそ、地政学は真剣に論じられ、これに長じた人材が出てくるのだということが分かった。
第2次大戦後から今まではハッキリ言ってそういう「今そこにある危機」が無かった、もしくは同盟国に丸投げしていれば良かったのだろうが、翻って冒頭の諸問題(中東依存のエネルギー、東シナ油田、外洋のメタンハイドレード)などは日本が自分で答えを出さなければならないものばかり。政治家や産業人が今一度意識する必要のある分野ではなかろうか、「地政学」。