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【アニメ】【映画】アイの歌声を聴かせて

2021年10月公開のアニメ映画。


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©吉浦康裕・BNArts/アイ歌製作委員会

アニメ映画といえば東宝みたいになっているが、どっこい松竹もここのところ、アニメ映画(オリジナルストーリーもの)を沢山送り出しているーーー「ジョゼと虎と魚たち」「サイダーのように言葉が湧き上がる」など。「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」「Free!」「響け!ユーフォニアム」など京都アニメーション作品の劇場版も松竹だ。
今作は、「サカサマのパテマ」(2013年)の吉浦康裕監督による新作オリジナルアニメ映画ということで、期待していた。
タイトルの「アイ」が、AIと愛をかけており、AIロボットの名前も勝手にアイだと思っていたが違った、ロボットの名前はシオンという。
北陸地方にある架空の町に最先端のロボット工学企業があり、その恩恵に授かりロボットと人間の共生が始まった近未来の話、という物語設定なのだが、ロボットSFが好きな人間にはたまらない設定がいくつかちりばめられている。
ロボットが女子高生に扮したときの名前「芦森詩音」の苗字は、有名なロボット学者アシモフからとったものであろうし、"人間の"メインキャラクターの悟美と十真は漫画「わたしは真悟」(楳図かずお、1982~86年、2016年にはミュージカル舞台化)から文字ったものと推測される。
自走するロボットものといえば、とかく悲劇的な結末や世紀末的な論調で描写される作品が多いが、この作品は兎に角終始ハッピーな気持ちで観ることが出来る。
歌うことでハッピーな気持ちになれるという幼少期の悟美の気持ちを汲んで生まれたAIロボットの詩音が、ところどころで歌唱するシーンがあるのだが、演じる土屋太鳳の唄が兎に角素晴らしい。悟美演じる福原遥は声がちょっと可愛すぎる印象だが気にならないレベル。約100分の中できちんと課題や伏線も回収してハッピーエンド、の軽めのミュージカル映画、という印象。人間とAIの共生という至極難しいテーマに就いては気づきを与える程度で、ヘビーな踏み込みは避けた感じ。
音楽娯楽作品として、惜しむらくは、幼少期の悟美が好きな音楽が明らかに「ディズニープリンセス」ものなのだが、権利上の問題で全て似せたオリジナルキャラクター、音楽で処理していたこと。ラプンツェルやアナ雪みたいなものが登場するのだが、矢張り登場させることは難しかったのか。トイストーリーにトトロが登場したり、レディプレイヤーワンに巨神兵ガンダムが登場したりするなどの事例は少ないながら存在するのだが、まだまだ有名作品の拝借、乗入れのハードルは高いのか、と感じた。
土屋太鳳の唄、秀麗なビジュアル、清々しいまでのハッピーエンド物語、という見どころはおおいに堪能した。


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