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【本】武装解除 紛争屋が見た世界

武器売買がテーマのアニメ「ヨルムンガンド」を観ていて、国際紛争の実態を少し知りたくなり、手に取った本。
まず、国連や国際NGOから紛争解決に関して名指しで指名される程有能な日本人が居たことを知らなかったとは、恥ずかしい限り。
東ティモール(東南アジア)、シエラレオネ(東アフリカ)、アフガニスタンの諸紛争について、紛争解決の肝となる武装解除の企画・立案・実行・管理をやっている、伊勢﨑賢治の手記になっており、彼が担当した地域の小史に続いて、現地で何が起きていたか、どの様に解決していったか、詳しく書いてある。
終始、無駄な方便は無く、淡々と現実がどうでそれを解決する為に即判断・実行。現地に居ない奴らは何も分からない、建前論なんぞ要らない、という現場監督ならではの現実的なコメントがこちらに刺さってくる。女子供を犯し、拉致し、手足を切って回る武装勢力武装解除するまで、武装解除後の民主国家とはそういう加害者と被害者が隣り合って生きていく残酷極まりない世界なのだということ、、、ここ数世代宗教紛争や民族紛争を経験していない日本に居ると音痴になってしまう感覚が満載に記されている。
また、武装解除には圧倒的な「行使しない武力」が必要であること、それによって国連や米国は紛争解決力があること、日本の援助が人道援助というのは建前に過ぎないこと、米国流の御仕着せの民主化強制が民主化=敵の構図を生みつつある懸念のこと、など霞が関では決して展開されないリアルな軍事論、国防論にも及んでおり、大変興味深い。
国連軍事監視団の存在も恥ずかしながら初めて詳しく知った。平和維持軍と異なり、彼らは丸腰で対象地域に入り、紛争当事者たちと対峙する、極めて高い交渉能力・判断能力を持ったグループだ。数日前、シリアに入った部隊もこれだ。「自衛隊は軍隊では無い」「現地でいかなる軍の指揮下にも属さない」という詭弁を並べるくらいなら、それでは日本の果たすべきカネ以外の紛争解決の手法とはこの軍事監視団のスタイルなのだろうか。。。おそらくそんな気概はあるまい。
過日読んだ『国防』(石破茂)と合せ、ちょっと持論を再整理したくなる内容だった。